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当社は、乾物や保存食の販売を主な業務とする株式会社で、今年は、上場をはたして2回目の株主総会を迎えます。ところで、この1年間、当社取締役Aの私行が、週刊誌などに取り上げられたことがあり、Aにはやましいところはなく、もとより当社の業務になんらの影響はないことなのですが、Aを次期取締役候補者とする株主総会の議題に関し、株主B氏が、直接総会で、Aに質問したいと息巻いているのです。総会当日、B氏からの質問に対し、Aがお答えしなければなりませんか。

(2011/01/12)

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取締役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について、必要な説明をしなければなりません(会社法314条)。

 これは、会社の所有者である株主が、名実ともに総会に参与したことを保障する制度で、取締役の説明義務と言われます。

 この説明義務を負うのは、取締役会を構成する取締役であり、その内容は、質問に対して説明を尽くすことにあるので、特定の取締役に対し、直接、株主が質問する権利が与えられているものではありません。総会の議事運営をはかる議長が、適宜、取締役を指名して、答弁・説明させればよいのです。

 株主の質問の対象は、株主総会の目的たる事項、すなわち、議案に関係する事項に限られます。従って、取締役の私的行為,たとえば、醜聞や犯罪は、それ自体としては、質問の対象とはなりえず、取締役は、このような質問に答える必要はありません。議長の判断で、質問は却下されることが多いでしょう。

 ただし、貴社は、A氏を次期取締役候補者として、議題に上程し、総会で選任決議を経る必要がありますので、A氏自身は、答弁する義務はないものの、一応他の取締役、たとえば議長である代表取締役が、A氏が適任である理由を簡潔に述べるのが穏当と思われます。

 A氏を含め、取締役候補者の略歴,地位,担当等は、予め総会招集通知に記載されており、総会に出席した株主には、賛否の判断材料は提供されております。そこで、会社業務に関係のない私行の点に触れることなく、総会招集通知に関連する範囲で、説明をすれば良いでしょう。