事例 労働問題一覧

退職金の性質について、かつては会社の恩恵に過ぎず、労働者の権利ではないという考え方がありましたが、最近では、賃金の後払いの性質を有すると解釈されるようになりました。

 ただし、就業規則や労働協約で、退職金を支給されることが明記されているか、規定は存在しなくても、そのような慣行がある場合に認められます。従って、全ての会社員が、当然の権利として受給できるというわけではありません。

 ご主人の勤務先が、常時10人以上の労働者を使用していた事業所であれば、法律上就業規則を労働基準監督署に提出しております(労働基準法89条)ので、この就業規則を見れば判明します。通常算定基礎賃金に、勤続年数に応じた支給率を定めた計算式が掲載されているはずです。

 また、本事例では、ご質問者の他に相続人がいるため、亡くなった方(被相続人)名義の不動産や銀行預金の処理のように、相続人全員の協議や印鑑が必要となると思われるかもしれませんが、死亡退職金は、相続財産ではないと解釈されます。

 勤務先企業が、一家の大黒柱の突然の死去により、生計の維持が困難とならないよう、就業規則等で、死亡退職金の受給者を定めていた場合には、この定められた受給者が受給し、一般的には、故人と生計を共にしていた者,すなわち、妻が固有の権利として受給者となります。

 明確な規定がない場合にも、同様に解釈するのが判例の立場です。なお、退職金請求権の消滅時効は、賃金債権が2年であるのと異なり、5年とされています(法115条)。