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『遺産共有』で注意すべき事柄…遺産分割と共有物分割

(2021/03/05)

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被相続人(亡くなった方)の財産を、相続財産又は遺産と言います。相続開始により遺産は、法定相続人の間で共有関係になります。

 なお、遺言により法定相続人ではない人に、遺産の全部・一部を贈ることを遺贈と言い、受ける人を受遺者と言いますが、この場合の受遺者と法定相続人の関係は、機会を改めてご説明いたします。

 最高裁判所の判例変更により、法定相続人が複数存在する場合は、遺産について抽象的観念的に、共有関係が生じます。これを遺産共有と言うことがあります。

 

最高裁判例が出される平成28年12月より前の実務は、預貯金については、相続開始により当然法定相続分に応じて分割される、つまり相続人は、各自法定相続分に応じた被相続人名義の預貯金を、直接金融機関から支払いを受けることができたと申しました。

 ところが、上記判例変更により相続開始と同時に預金についても遺産共有関係が生じ、相続人間でこれの分割協議が整わない限り、金融機関は解約・引出しには応じなくなりました。

 

では、不動産についてはどうでしょうか。

 こちらも遺産分割協議が成立して、相続人のうち誰が相続するか、あるいは誰と誰が持分いくらの共有とするかなどが決まっていれば、そのとおりの相続を原因とする所有権、あるいは持分移転登記手続をすればよいです。

 しかし問題は、むしろおかしいおも思えるのですが、不動産登記については、遺産分割協議が成立しない間でも、つまり遺産共有の状態にあるときにも、法定相続分に応じた相続を原因とする移転登記ができるのです。

 

例えば、父(夫)に相続が発生し、相続人は母(妻)と子2人だとすると、この相続人3名のうち、誰でも父が所有する不動産について母が2分の1、子が4分の1ずつの持分を有する移転登記ができるということです。

 つまり遺産共有関係にあり、遺産分割協議が成立していない間にも、『法相続分』に対応した各自持分を有する登記ができ、共有関係が登記簿上も現れるということです。

 

共有関係が登記簿上生じるだけで、もちろん不動産が現実に分割されたり、処分されるわけではありません。

 しかし、相続人各人が、共有持分を有する関係が成立すると、この共有関係を解消し、現実にどのような分割をするかについては『遺産分割』の原則、法文は適用されなくなります。

 

なぜか。それではどうすればよいか。これについては、次にご説明します。

 ここでは、遺産分割協議が成立する前に、法定相続分に従った共有登記にしてはならないという結論だけ覚えてください。