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司法委員として感じること―久しぶりにいくつか(1)

(2018/09/03)

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今日は司法委員として、簡易裁判所に勤め、裁判官から当事者に主張整理や、和解勧試を託された経験から、感じるところを書きます。

民事訴訟の管轄は、基本的に訴額により定まり、140万円以下の民事事件は、簡易裁判所に係属します。典型的なのは、140万円以下の金額の貸金請求や、交通事故の物損に関する賠償請求です。ただ不動産の明渡しや、境界確定、管理費の請求等もあります。

 

司法委員は、社会的経験を積んだ学識をもつ、人格的にも優れた人が任命される建前ですが、弁護士資格を持つ者はそういう観点からではなく、単に法律事務に詳しいという理由で、一定数配置されているのが現実です。

ですから、私が割り当てられる事案は、法的係争の要因が強いものが少なくありません。 簡易裁判所のもう1つの特徴は、民事訴訟では当事者本人(法人の場合は代表者・支配人)以外は、弁護士を代理人として出頭するのが法の原則のところ、「許可代理制度」があることです。例えば、クレジット会社の担当者、子が損害賠償の当事者となった親等が許可を受けて、代理人となることが認められています。

その中で、当事者本人より以上に感じるのは、「代理人」となった人の意気込み、感情、そして人の話を聞くことに、慣れていないことです。

因みに本人、即ち会社としての方針が固い金融会社から派遣される代理人は、むしろこの反対で、「本人」を説得できないのですが。 代理人の行なった効果は、本人に帰属します。弁護士ならば当り前ですが、その判断が本人に影響するので、必ず説得し、納得してもらいます。

 

これが本人ではない、代理人の役割です。 私ども法律実務に携わる司法委員が、主として法律的見地から事案を整理し、進行をはかろうとするとき、たいてい自己主張のみ繰り広げて、容易に先へ進まないのが、当事者本人の体となった許可代理人です。裁判所で司法委員を介して伝え、次回までに準備することができないことも少なくありません。

話が進まないのです。 本当に本人の利益になっているのか、疑わしいと感じることが、事実あります。そんなとき、評議の結果裁判官は、許可代理を取消したり、本人に出頭を求める手続を執ることもあります。 簡易裁判所は、市民に近い裁判所であるがゆえの利点と問題点です。 裁判所は、法律相談をする場ではないのですが、つい理解していただけない当事者代理人には、説得をしてしまう。

それが、あたかも裁判の公平を害するかに言われるのもまた事実です。代理人である自分が気に入らないのは、最後まで気に入らないということのようです。 私ども司法委員は、弁護士に相談してくださいと言うのですが、さまざまな理由をつけて対応されないのです。 それは、実は本人の立場で行なっている自分の要求は、無理筋であることをわかっていても、認めたくないからだと思われます。

 

でも代理人の行動は、本人に効果が生じます。 弁護士や司法書士が、首に鈴をつける役割をしてほしいと思います。 裁判は、白黒つける場という人が多いのですが、白黒つけて幸せが得られるものではないと考えます。 裁判所から、弁護士の役割がまた見えるのが、司法委員・調停委員としての経験だと思っております。