遺産分割協議を進めるにあたって大切な資料について
(2022/03/27)>> 一覧に戻る
相続とこれに続く遺産分割事件では、考察・検討すべきは以下の順序です。
最初は、相続人の確定です。誰が相続人か、普通はわかっていると思いますが、遺産分割協議は、全相続人で行わなければなりません。そうでなければ、例え協議書に調印しても、登記手続や預貯金の引出しはできません。
よく言われる被相続人の出生から、相続発生時までの全ての戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)を取り付ける必要があります。
次に、相続財産の範囲を確定します。実は、ここが結構争いになります。
「相続財産」は、生前贈与を受けたものは戻されてカウントされますし、例えば被相続人が契約者の保険や退職金等は、税務と異なります。
また名義は、他の人(例えば相続人のうちの誰か)であっても、その原資を出したとか、個人のお金で会社名義で運用していたようなケースもあります。
具体的な分割の話を行うにあたり、「相続税が発生するかどうか」は、とても大切なポイントです。相続税の納付を要するような相続が起きた場合は、当然納付期限(10ヵ月)までに、税理士に委任して申告書を出します。
その場合の「相続財産」は、相続発生時の被相続人名義の財産となっています。ここで、およその相続財産の範囲(目星)とその価額が見えてきます。
相続税の申告時までに、遺産分割を完了しなければならないものではありません。ここもよく誤解されるところです。法定相続分に応じた未分割の状態で、申告することが少なくありません。
この場合3年程度の間に、相続人間で、具体的な遺産分割協議が成立する見込みである旨弁護士の上申書を添付すると、後日修正更生申告により対応することができます。
私たち弁護士が、一番初めに目をつけるのは、相続税の申告が必要な相続かどうかです。
定額控除が3000万円に、600万円×法定相続人数が、相続税がかからない相続財産です。ですから、例えば相続人が2名で、合計4000万円を超える相続財産があると思われるときは、まず申告を急ぎます。
相続税の評価と、遺産分割時の相続財産の評価は、同じではありません。しかし申告書控は、極めて重要な資料です。
少なくとも家庭裁判所での遺産分割調停、そして審判には、必ずその添付を要します。裏返して言えば、相続税が発生する相続・遺産分割のケースでは、申告と納税なくしてその先の手続、すなわち具体的な相続財産の分割には進まないということです。
相続税の申告をするとき、その財産の存在を示す資料の添付が求められます。
不動産登記簿謄本・通帳写し・有価証券取引明細書等です。これらを手掛かりに、遺産分割協議を進めます。
相続税が発生しない相続の場合は、もちろん申告は不要です。従って何が相続財産かは、被相続人と一緒に暮らしていたとか、事実上介護・監護していた人を中心に情報を出し合って、確認確定していくほかありません。
預貯金は遺産共有となり、全相続人による遺産分割協議が成立するまで、解約引出しはできません。
また不動産についても、法定相続によらない登記、例えば母と子が相続人の場合、母を4分の3、子を4分の1とする相続登記は、子の同意(押印)なくしてできません。
かと言って、法定相続に従った各共有持分登記をしてしまったら、「遺産分割」はできなくなり、「共有物分割請求」という厄介な手続に進まざるを得なくなります。
相続問題は、先送りしてはいけません。
自分の代で解決させるという姿勢が大切です。手順は上記のとおりですが、これに従って具体的な分割手続と履行がなされるかは、簡単ではないはずです。
相続財産があることに感謝して、これを受け生かすために、是非とも早期に、特に納税時期前に、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。