離婚すると言って人が、実際離婚しない原因について
(2021/10/19)>> 一覧に戻る
以前、「離婚しないメリット」について書きました。
当面楽になれば、特に困らなければよいというケースです。
例えば、夫が妻に対して離婚すると宣言して、所有する物件を出た場合、住宅ローンや管理費・光熱費等は、夫名義の口座から引落され、別途生活費の支払い(法的には婚姻費用分担)があれば、残された妻は困らないかもしれません。
この場合、夫側から離婚請求調停等を進めなければ、事態が動くことがないことはわかります。夫としても、同居中の嫌な空気がなくなったので、多少の出捐は伴っても、「これでよい」と思えば何もしないかもしれません。
これに対し、離婚したい夫が、妻所有の物件から出て、「生活費」を入れなかった場合はどうでしょう。もし妻が、ほとんど収入がなく、物件の住宅ローン等も夫の収入により支払われていた場合は、妻はとても困ると思います。
一定の婚姻費用の分担は、調停や審判で決められたとしても、夫はさほど困らないかもしれません。
なぜなら住宅ローンの支払いは、基本資産形成とこれの維持の面があり、「婚姻費用」については、当然には含まれないとされるからです。
つまり夫は、同居のときより実質「生活費」の分担額が減り、楽になるということです。とすれば、困っていないので動かない可能性があります。
ここまでは、既にお話したことの繰り返しです。
今回お話するのは、いわば「離婚の撤回」の如き例です。
つまり、離婚する!と息巻いていた側が、撤回もしくは躊躇するケースです。
いくつか例を挙げますと、
① 夫と離婚したい妻が、夫には沢山(財産分与の対象となる)財産がある と判断していたが、実は、不動産は親名義で、退職金の前借りや投資の失敗等で、多額の債務があった。
② 別の女性と結婚するために、妻と別居して離婚したい夫が、妻との離婚協議が長期化している間に、件の女性に逃げられて、行き場所がなくなった。
③ 夫と離婚したい妻が、親権者に指定されると疑いもなく、幼児を残して家を出たが、夫との間の離婚協議が長期化し、「現状を変えるべきではない」として、親権監護について厳しい状況に至った。
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これは、ほんの例です。予定・計画、あるいは思い込みが狂ってしまい、離婚できない、あるいはしたくない、また離婚すると困る事態に陥る場合です。
なぜこうなるのか、どうすればよかったか。
離婚をするという意思は、不退転でなければならない。そして、これを決めた以上、後戻りはないという覚悟を持つことです。
「離婚する」と決めた段階で、必ず弁護士に相談すべきです。
最終局面までのプロセスを説明し、また「この件」の落とし処、見通しを最初に申し上げるはずです。