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離婚における財産分与の基準時について

(2021/07/27)

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離婚の際、財産分与の論点が出てきます。

 

財産分与とは、夫婦が婚姻中に形成してきた財産の清算のことです。婚姻中に形成してきた財産も、名義は夫婦いずれかになっていることがほとんどですから、この『実質的共有財産』を離婚にあたり分ける作業です。

 例えば、夫が給与所得者、妻が扶養を外れない範囲のパート収入の夫婦が婚姻後、夫名義で不動産を取得した以外にはこれといった財産がない場合、離婚にあたり妻は夫に対し、不動産の評価額の2分の1の価格の請求ができます。

 ところで巷ではいろいろ言われていますが、実務上動かないと言うよりも、決まっている判断があります。

 例えば、夫婦の実質的共有財産に対する割合は1対1、つまり他方名義の財産に対して、2分の1の請求権があります。

 また、いつからいつまでの財産の清算かについては、『同居期間中』となります。婚姻届の日と同居の日が、それほど離れていない場合は、婚姻日がスタートと扱われることもありますが、財産形成の終期、これを『基準時』と言いますが、これは同居生活が失われた日となります。

 この点家庭内別居が続いていたとか、別居後も子育てその他で『協力』してきたとか主張されることがありますが、一見明白な『別居した日』を基準時として、それぞれに財産の評価を主張・整理させるのが、裁判の現場です。

 つまり裁判所は、それぞれの名義の財産を明らかにさせ、それぞれにその価格を主張させた一覧表(対照表のようなもの)を作成し、争いがある部分のみ判断します。

 なお、『絶対離婚しない』と言い張っていても、仮に離婚となる場合は財産分与の申立てをする例です(これを付随的処分の申立てとも言います)が、こうなると、離婚となります。

 つまり、財産分与一覧表が確定すると和解離婚するか、判決で離婚となるかのいずれかとお考えください。

 財産分与額は、基準時、つまり別居時のそれになります。

 

もっとも不動産の評価などは、別居が数年前となると当時の査定書を用意することは難しいと思います。いちいち不動産鑑定などしない実務です。この場合は、現在の査定書からある程度の数字を推定して評価します。

 かつて私は、ある不動産の査定書を当事者それぞれが合計5~6通集めた例があり、なんと裁判所は、その合計平均値をその不動産の価格とした例を経験しました。

 一般的に不動産の評価は、売却したい側は高値を、引き続き居住するなどこれの所有権を確保したい側は低い数字を出してきます。この裁判所のやり方は、あまりにもアバウトですが、これが現実です。

 今回は、分与の対象となる財産の評価は、別居時が基準となると覚えていただきたいと思います。