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離婚・男女問題で相手方の話を聞く意味

(2022/04/12)

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離婚を求められた側は、なかなかその事実を受け止めません。

 

例え自ら家を出て別居しても、残された側から離婚を切り出されると反発したくなるものです。自分に反旗を翻した。自分が否定されたと感じるらしい。

 こういう本質ですから、私ども代理人は、依頼者の相手方の本音を汲み取り、話し合いのテーブルに乗せ、決して追い詰めず、リスペクトしつつ、解決を目指します。

 

もっとも、これは受任弁護士として行うのであり、依頼者本人の立場・感情はまた違います。これまでの恨みつらみはあるでしょう。代理人弁護士が入った途端、おとなしくなったケースでは、「信用できない」「先生は騙されている」と言われることもあります。これは反対に、こちらが相手方の意をうまく汲み取って持ち上げる形をとって、騙しているとも言えるのですが。

 

相手方と話ができるようになれば、その主張は相当対立していても、いずれは解決に向かいます。絶対に離婚すると強い決意があり、相手方が――対立はあるが、――話自体はできる状態ならば大丈夫です。

 

 

ところが、そうはいかないケースはあるのです。

 

前回離婚したいのに離婚できない、あるいは膠着状態が続くケースとして「相手方と本人通しが直接やり取りしたこと」を挙げました。その例は、主として

依頼者側からアプローチしたケースです。

 

しかしこのことは、相手方にとっては狙い処です。「直接本人と話をさせてほしい」これを認めたら「おしまい」です。

 相手方は、何とかあなたをコントロールしたい、手のひらに乗せておきたいのです。まあ、いろいろ言いますよ。

 「離婚の話は全くなかった」「昨日まで話をし、ともにご飯を食べていた」「一度も不満・不安を言われたことはなかった」あたりは序の口。だってそんなあなた(相手方)が恐くて、支配されていたから何も言えなかったのですから。

 

次に出てくるのは、弁護士に騙されている、家庭の問題に口を出すな、あんたたにわかるはずがない等々。こういうも、私は慣れっこになっています。

 それでもダメなら、今度は親族・勤務先、さらに議員や町の有力者?を使って仕掛けてきます。そんなもの、私には通じませんけど。

 

その後調停、そして裁判と進みます。悪態は続きます。しかし、さすがにわけがわからなくなるのか、やがて私の依頼者、つまり離婚を求める人を非難します。こうなると、もはや同居生活は不可能で、婚姻関係の破綻を自ら証明したことになります。

 

それでも私は、依頼者もこんな人に対しても、腹八分目を忘れないのですが、収まらないこともあります。調停委員会や裁判官に対しても、「直接話合わせてほしい」なんて言いますから。

 

こういうケースは、首に鈴をつける人が現れてくれない限り、この相手方となった人は救われない。困ったことに、こういう人に迎合する弁護士もおりますから。

 

ただし、さすが裁判になれば弁護士が入るでしょう。そうなれば、どんな結果になっても、相手方の弁護士さんが引き受けてくれます。

 ですから、話を聞いてくれない相手方であっても、離婚したい意思を堅固として手続を進めれば、最終的には離婚になります。

 

5年以上かかったケースもあります。諦めたら、相手方の手のひらに乗ったらおしまいです。

 

こういう人を相手方にして、何とか調停合意にこぎつけそうになったとき、やはり離婚しないと言い出されたケースがいくつかありました。相手方に代理人が就いていないケースは、結局調停不成立となり、「そのまま」となったこともあります。

どーでもいいようなことに難癖をつけるのですが、本当は、自分の思い通りに操縦できなかったことが悔しいのでしょう。離婚するしないは、どうでもよくなった人です。私たちは、そういう人を追い詰めません。

 

そんな場合、時を得て再度調停申立てし、あるいは裁判を起こして離婚となったケースはあります。しかしここで疲れたのか、ガッカリしたのか、依頼者の意向で「そのまま」になってしまったケースもあります。依頼者本人が希望しないなら、裁判は起こせません。

 

あるいは相手方は、そこまで見込んで対応していたのかもしれない。そうであれば、私が依頼者をしっかり引っ張り、つなぎ止めていなかった失敗例です。

 

とにかく、本人通し直接話をさせない、代理人弁護士として話し合いに乗せる。これは揺るがない鉄則です。

 

相手方(その代理人)と積極的に話をする、これが解決への道筋です。