上野駅の下のホームに立つと、東北の匂いがすると言われます。 出稼ぎの人たち、かつて金の卵と言われた集団就職の若者が、ここに到着する列車から、おおぜい降りて来ました。 青函トンネルを通過して北海道に繋がる寝台列車、ブルートレインと言われる北斗星、そして大阪と札幌を結ぶトワイライトエクスプレスも、今年3月で運行が終了します。 ブルートレインの多くは、東京駅から出発していました。 ブルートレインとは、青色の車体が疾走するところから名付けられたので、寝台特急をイメージしていたのですが、東京駅からは、寝台特急の他に、座席式の急行『雲仙、西海』『霧島、高千穂』あるいは『桜島』などが、まる1日以上かけて東京と九州を結んでいました。 東京駅からのブルートレインは、数年前に廃止されました。 東京駅からも、上野駅からも、ブルートレインがその役割を終えたのは、航空機が多く利用されるようになったからです。 遠くに早く移動できる航空機は、やがて鉄道に替わって国内での交通機関の主役級に躍り出たのです。 かつての上野駅が、東北の入り口だったとすれば、東京駅は、九州の入り口だったと言えます。 ところで、航空機が発着する空港では、どんな匂いがして、また、何処かの入り口となるのでしょうか? 私は、空港は、どこに行く人も隣合わせ、空港は、日本あちらこちらを結ふ起点なのだと感じます。 たとえば、羽田空港の搭乗口は、北海道行と九州行が並ぶことがあります。 私が福岡出張の折、しばしば利用する7時15分発JAL303便は、羽田空港第1ターミナル13番搭乗口ですが、その隣12番搭乗口からは、7時ちょうどには女満別空港行きが、7時50分には函館空港行きが出発します。 搭乗口前のソファーでは、博多弁と北海道のイントネーションがそれぞれ飛び交い、スーツ姿の出張族が、携帯やパソコンをいじっている風景が見られます。 ブルートレインにとって替わった航空機も、今度は新幹線に押されるようになりました。 今年3月の北陸新幹線開業により、おそらく羽田からの富山小松便は減るでしょう。以前あった羽田花巻線はなくなり、私が楽しみにしていたプロペラ機が結ぶ鹿児島福岡線も、減便となって利用することはなくなりました。 東京から西に向かう場合、新幹線利用と航空機利用の比率は、岡山まではほぼ拮抗、広島で逆転と言われておりました。 ところが新幹線のぞみ号が、東京広島間ではMAX20分待てば乗車できるようダイヤが組まれたあたりから、広島でも新幹線優位と報じられるようです。この空と陸の戦い、結着することはなさそうです。 私は、鉄道駅には、ふるさとやその土地の匂いがあって、空港には、日本中ありとあらゆる場所とそこに行き来する人を受け入れる懐であって欲しいと思っております。 同じビールであっても、それを飲む空港、そこから眺める景色によって、味が違う感じがするのは私だけでしょうか?