あるテーマパークの『氷の水族館』炎上問題を考える。

2016年11月29日
テーマ 
これは価値観の違いと言うか、ネット社会の凄さと言うか、時間が経つにつれて、いろいろ考えさせられる『事件』がありました。北九州市にあるテーマパーク『スペースワールド』で、『氷の水族館』が批判を受けて、営業約2週間で閉館に追い込まれる『騒動』がありました。

スペースワールドでは、『アホやります』と銘打って、これまでのテーマパークにはない企画を次々に演出していたそうです。その中の一つが、来年5月までを予定して、11月12日に開業した氷の水族館であります。


何がアホかと言えば、美容ソルトを大量に投入したプール、お経を流しながら疾走する絶叫マシン等、これまでのテーマパークにはなかった試みを用いたことです。その中の一つ『氷の水族館』とは、アイススケートを楽しむリンクがあるのですが、実は氷漬けされたリンクの下には、約5.000匹の魚が並べられていて、その氷上を滑ると言うアトラクションだそうです。スペースワールドの公式facebookには、『おっ、おっ・・・溺れる・・・くっ、くっ苦しい!』等の表現があり、残酷、命の冒涜等の非難がなされました。

当初スペースワールド側は、先の『アホの試み』はともかく、『海の上を滑っている感覚を楽しんでもらいたい』と説明しました。氷漬けされ、リンクの下に閉じ込められている魚は、出荷できない規格外の死んだ魚であり、漁師さんに説明した上で、廃棄される前に仕入れたこと、閉館後は供養して『廃棄』するとのことでした。


それがたちまちネット上で批判が拡がって、遂に11月27日に『中止』と『閉館』が決まったとのことであります。

ネット上の意見として、残酷、気持ち悪い、悪趣味等があります。要するにお魚さんが可哀想、水族館の意味ないでしょうと言うことだと思います。確かに一部氷の上に現れている魚、血が滲んでいる魚等あり、見るに耐えないと気持ちは一般的でしょう。

ただし、この水族館、開館してしばらくは物珍しさがあったのか、『アホ』を見たかったのか、かなりの人気だったとされます。それが福岡県外の放送局がこれを放映した直後から、批判が続出した流れであります。この後ネットに拡がり、この氷の水族館、『炎上』したとされます。

これは従来の『水族館』の概念には収まらない企画であることは確かでしょう。あの狭い水槽の中でも、そこでは、生きて泳いでいる魚の姿を見て学ぶのですから。死んだ魚を氷漬けして展示?する水族館はないと思います。また、スケートは、単にリンクを滑走するものと捉えれば、氷の下に死んだ魚がいて、何も海の上にいる気分になる意図で、わざわざこのリンクを選ぶ人はいないようにも思います。

あまり指摘されていないところですが、私は、そもそも『アホ』なる言葉は生理的に嫌いで、これをバカなことと言い換えても、なんであえてバカやる必要があるのか、バカをウリにして人集めをするのか、好きになれません。ホント、高い内閣支持率のもと、アホが流行っていくのでしょうか。

でも、この『氷の水族館』を批判しているのは、私を含めてここに行かない人、興味ない人がほとんどではないでしょうか。実際それと知ってスケートを楽しみに?訪れた多くのお客さんがいたのです。残酷と言うなら、日本人は魚を食べ、残りカスは廃棄するのですし、マグロの解体シーや世界から批判を受けているクジラやイルカの漁もあります。動物保護の観点からすれば、動物園や水族館の存在自体が、自然の生態を無視して閉じ込めて鑑賞させる点で、意見はあるのではと思います。

私も何回か見たことがあるさっぽろ雪まつり、すすきの会場では、毎年氷の彫刻が展示されます。氷の中にはきれいな北海道の魚が閉じ込められています。あれを見て、気持ち悪いとか、かわいそうなんて意見はあるのでしょうか。


おそらくその美しさ?と技巧に感嘆するのではないでしょうか?おそらく北海道を知り、札幌を知ってもらうために、お魚さんも『協力』しているのでしょう。死してなお北海道をアピールするのは、感動的とまでは言わないにしても、残酷なんて言うのは失礼なのかもしれません。氷の下に閉じ込められた魚の上を滑走するのとは、違いがあるのではと思います。『死者』を美しく、恰も讃えるようなやり方と、スケート靴の下に置いて、踏みつける?やり方とでは、受け取り方が違うのはわかる気がいたします。

スケートなんかしない、福岡に行ったら魚を食べるだけの私なんか、批評する資格があるのかですが、確かにあの映像を見たら、よい気持ちはいたしません。つまり、見なければ良いのです。知らなければ良いのです。だって現に『アホ』につられたかどうかは知りませんが、これが放映され、ネット上で批判されるまでは、お客さんは入っていたわけですし、初期のころは、批判を受けてもスペースワールド側は、止めることは考えていなかったのですから。アホの企画だと割り切れば、『そんなもの』で済まされないのでしょうか。各地のテーマパークも集客に苦労しているわけで、ある意味、斬新な企業努力とは言えないのでしょうか。

いつも思うのです。

ネット上で批判する人たちは、批判の対象が、自分とは無関係、少なくとも関わることがないがゆえに、意見しているのでしょう。相対的貧困、裁判員の悩み、辺野古沖移転問題、原発再稼働等等、『これでもか!』とばかりに、『少数意見』や失敗した人、弱い人等を叩きます。このスペースワールドの総支配人、テレビ局の取材に応じて、今は閉館したリンクを案内していました。『お客様が少しでも楽しんでスケートができたらいいなの思いで考えたんですが……』と説明した後、テレビ局の人に向かって、深々と謝罪していました。

私は、その姿を見て、凄く違和感を持ちました。



なんでテレビ局の人に謝るの……。国民に向かって謝る必要性があるとは思えませんし、スケートした人は喜んだでしょう。批判しているのは、ここを訪れて不快感を持ったと言うわけではない匿名の姿を見せない人たちが文句を言い、騒いでいるのでしょう。この人たちに謝りますか?何か釈然としない騒動でした。