『自分は悪くない、被害者だ、なんで弁護士費用を負担しなければならないんだ』と思われる方へ。

2016年10月6日

きさらぎ法律事務所は、事務所内での初回の相談は無料で、相談時間の制限を設けておりません。

 

ホームページをご覧になるなどして、毎週初回相談の方が見えられます。私が相談を受ける前、その申し込みの電話を受けたときにいくつか感じることについては、この『ひとりごと』でお話しました。ここでは繰り返しませんが、とにかく事務所に来ていただきたい、全てはそこからであり、いらっしゃってお話をされることは、絶対に無駄にはなりません。

 

そして、相談前に描いていた方向結論や、期待していた答えが得られることはほとんどないことが実感されます。それでもご相談者にとって、問題が解決することに気づかれるはずです。『急いでいる』『費用を教えて欲しい』『得意で強いのか』の質問に、その場で期待する答えがなかったことを理由に、きさらぎ法律事務所での初回無料相談をパスされるのは、私が言うのはおかしいですが、『本当にもったいない』です。

 

さて、今日は、きさらぎ法律事務所にいらっしゃって、相当時間ご相談され、目指すところ、着地点が認識でき、そのまでの諸手続きとプロセスがわかって費用(着手金)もご説明したのに、ご依頼をされないケースに関して、私が思うところを書きます。

 

以前申しましたとおり、きさらぎ法律事務所での初回相談を受けられた方には、その場で委任契約は締結いたしません。いわゆる即ご依頼を受けることはしないのです。それは、あたかも相談をしたら、必ず頼まなければならないかの雰囲気があっては、半ば強制であり、そんな関係で、この先信頼関係が築かれるか疑問だと言う当たり前のことはあります。

 

それよりも大切なのは、ほとんどの方が、期待した答えが得られなかった、しかし解決のためにこうしよう!と案内されて、『そうかなぁ』と感じたはずであり、今一度本当にそれで良いのか、落ち着いて考えて欲しいからです。

 

ここにいらっしゃる方は、これまたほとんどの方が、初めての法律相談ではないようです。

 

あちらこちら訪ねて弁護士から『回答』をもらった上での相談です。つまり、以前得た回答では、『解決』にはなっていないと言うことです。 『解決』ってなんでしょう。法律問題に遭遇する方は、すでにその段階で、なんらかの権利侵害を受けていたり、失ったものがある、少なくとも何か放っておけない事態が発生しているわけです。

 

ゆえに、何もしなかったら、何も解決しないのは当然のこととして、仮に行動を起こす、弁護士に依頼して法的な対応をするとしても、元々の状況にプラスはもたらされません。例えば、時価1.000.000円もする貴重な骨董品を預けていたとこら、その家に泥棒が入って盗まれた、預けた人に対して損害賠償請求をしたところ、裁判等によって、1.000.000円の賠償金を確保することができたとします。

 

その場合、件の品物は返ってこないことは理解されるとして、このような手続きを取る羽目になったことに関して、賠償して欲しいと思う方はおられると思います。相談の場で、かかった弁護士費用は、相手に請求できますか?と質問を受けることがあります。

 

もしこれが支払われないとなると、弁護士に金を支払った分だけマイナスとなったと感じられるからです。 今、民事訴訟法の改正論議の中で、弁護士費用の敗訴者負担が検討されています。

私は、これには強く反対します。国や行政を相手に声を上げる人が無くなって、強いものの横暴が続く世の中になると言うのは、あらゆる場面で私が申し上げているところですが、それよりも現実的な問題があります。

 

以前ここに取り上げた『強いですか』『勝ちますか』の論議が横行し、これに応えるべく弁護士の側も、ほぼ例外なく『強いです』『勝ちます』と言うでしょうーー私は言いませんが。

 

そうでもしなければ、権利侵害を受けた人、権利を主張したい人は、何を頼り、どうすればよいのですか?反面、『勝ちます屋』が増えるでしょうね。何の根拠も理念もなく、単に困っている人を食い物にする輩が出る危惧もあります。金を使って、弁護士を使えるごく一部の『強い者』は別として。

 

何を言いたいかと思われます。おそらくご批判を受けるであろうことを承知で申します。それは、弁護士費用を支払うのはもったいない、損だ、意味がない、そんなもの、相手が支払うべきだのお考えが招く危険性であります。

当たり前ですが、いったん失われたモノは、元どおりになりません。さきほどの骨董品の例でもお分かりのように、壊れたモノは元には戻りません。でも、その価額に相当する価値は、弁護士に依頼することで確保回収できました。何もしなければそれで終わりです。

 

このとき、弁護士に金を支払って損をしたと考えるかどうかです。そして、この判断が、依頼するかどうかの段階で、影響していると思うのです。 日本弁護士連合会は、平成16年に、報酬会期を撤廃しました。

 

費用は、依頼者と弁護士との間で、自由に取り決めしてよいことになりました。これで、きさらぎ法律事務所の初回相談が無料であることの理屈がつきます。それまでは、業務の有償性から、無料相談は、基本的に弁護士会そのもののが主催するような公的なものに限られていたからです。

 

ただし、会規が無くなったからと言って、以前あった会規に沿って費用を決めても構いません。私は、異本的に元存在した会期に準拠して依頼を受けます。例えば、ある事件で、着手金300.00円としましょう。

 

『30万円』と聞けば大金です。一般の人は、即座に右から左となる金額ではないと思います。この着手金は、何が含まれるかと言えば、依頼事件が終結するまでの弁護士の仕事料です。何年かかろうと、その間何回時間打ち合わせその他に要するとしても、また、何回裁判所に行こうとも、そのとき何時間拘束されようとも、全て含まれています。

 

もちろんこの間弁護士は、弁護士であるだけで、事務所経費は負担しております。 『着手金と報酬で、〇〇円取られるんですか?』と言われる方がおります。やはり弁護士に金を支払うのは無駄だと思われるのでしょう。それは、もう『説得』できるものではないです。

 

それと、弁護士費用ではないにしても、『金を支払って解決する』との考え方に馴染まれない方も多いと感じます。現在相手方から、あーだこーだと権利主張されている、すなわち金を支払えと言われているケースで、とことん拒絶しているがゆえに、解決していないケースです。

 

確かに事案の内容としては、この相談者に分があるとします。それでももう一切相手をしない、何も言われないために何をするかの観点で考えていただきたいものです。このようなケースでは、たいていご相談者には、既に幾ばくかの『利益』が入っていて、これを吐き出したくない、つまり、心情的に相手方は、ずるい、ケチだと思っていて、諦めきれないことがあるように思います。

 

もとより全く理不尽な要求には、断固として対決してケジメをつけるべきです。今、ここで決断することで、もう悩まなくても良いのに……と思うことはあるのです。 『金は天下の回りもの』とも言われます。弁護士にお金を使うこと、弁護士と打ち合わせし、その方針に沿って出したお金は、無駄金ではありません。

 

何にお金を使うか、生かしたと願うものです。