オートパイロット化された航空機でも、離陸のときは、プロの人力に頼るのです。

2016年10月13日
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航空機に搭乗する機会が少なくない私ですが、先日初めて離陸に向けて滑走路を走行中の搭乗機が、離陸を中止する事態に遭遇しました。ゴーアラウンド、すなわち、着陸復航の経験は何回かあり、それもーー見たわけではありませんが、ーー車輪が地上に接地する前に、機体が上昇したので、機内で衝撃を受けることはなかったです。

 

また、全員搭乗して、航空機がボーディングブリッジを離れた後に、何らかの不備が見つかって、誘導路に停止して、機体が整備された経験は何回かあります。 しかし、滑走路を走行中に、離陸が中止になった経験はなかったです。

 

かねてより滑走中の離陸の中止には、大きな衝撃がかかること、場合によっては前のめりになって、額をぶつけることもあり得ると聞いておりました。それ故乗客の安全のために、コックピットはギリギリの判断をされるのだと思っておりました。平たく言えば、不意に急ブレーキがかかるわけで、体が自然に反応するのは避けられない状態です。ですから、経験者は、怖かったと言われます。

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これもよく言われることですが、離陸中止を決断するのは、ひとつの基準があります。『オートパイロット』、自動操縦が当たり前の現代の航空機でも、離陸は手動で行われます。つまり、人間の判断と腕によるのです。後に申しますが、私はこれこそ重要で、安心だと思っています。今回の離陸中止も、機械に頼らぬ機長の判断でした。さすがプロと唸らされます。 管制から離陸の許可が出ると、操縦室は、動力源を定められた離陸推力まで上げ、浮上できる速度まで加速します。ただし、エンジンの動作に問題がないか確認するために、ギアのブレーキをかけた状態で滑走しますので、万一推力を上げたのに異常を感じたら、停止することは可能です。

 

一般的には、異常なんてないはずですから、ギアのブレーキを解除して、オートシステムのスイッチを入れ、これが作動するとスラストレバーが動いて、エンジン出力が離陸に適した推力まで自動的に上昇、機長が操縦桿を握り、副操縦士とともにスラストレバーの上下を支えるのだそうです。 もっとも私は、その操作を実際見たわけではありません。これは、十年くらい前に、依頼者となったある航空会社の操縦士の方から、興味本位にお聞きしたものです。

 

ちなみに、操縦士の資格は、航空機の種類によってあるそうで、その方は、ボーイング747型の機長でしたが、この機種は、やがて無くなるので、そのときは、ボーイング777型機の操縦士の資格を取得中でありました。

 

しかし、それでも滑走中に、離陸中止となるケースはあると言うことです。今回の私のケースは、滑走中と言っても、すぐに「あぁ、止まったな」とわかるもので、ほとんど衝撃はありませんでした。ですから、さほど航空機が離陸に向け、速度を上げて、進んでいなかった段階で、中止措置がとられたのだとわかります。

 

速度から、残りの滑走路を使って離陸中止が許される限界があります。その位置を、速度と残りの滑走路の長さから『V1』と呼ぶらしいです。V1を超えての停止操作は危険であり、V1を超えたらいかなる場合でも、離陸操作を継続しなければならないとされています。 かつて福岡空港で、ガルーダインドネシア航空の航空機が、滑走中に離陸を中止し、滑走路を飛び出して防御フェンスも破壊し、空港敷地外の道路を超えて停止した航空機事故がありました。この事故は、死傷者が出る惨事となったのですが、V1を超えたのに離陸を中止しようとしたたことが、大きな原因だとされました。よく離陸後何らかのトラブル、例えば片方のエンジンが停止したとかで、出発空港に緊急着陸した航空機の例が報じられます。

 

そのうち離陸の操作中に異常を感じたが、既にV1を通過したので浮上したケースはあると思います。 私は、オートパイロット化された現代でも、離陸時だけはパイロットの手動を要する点で、離陸は安心しています。裏返して言うと、あまりにも機械に頼るのは危険だと思っていると言うことです。安全性には影響はなかったかもしれませんが、今年は、航空会社の発券トラブルが相次ぎ、機械のメンテナンスやバックアップの不備で、全国の空港で、搭乗手続ができなくなつたことや、ベルトコンベアの不都合で、貨物室へ乗客の預けた荷物を搭載できないまま出発したこと等、コンピュータ、機械のトラブルが少なくない感じかします。

 

機械を作るのも人間、結局は公共交通機関に携わる人々の使命感、プロ意識によって、安心安全が確保されているのだと思います。 私が搭乗した10月8日ANA631便A320型機は、離陸を中止して整備をしなおしましたが、結局運航不能となりました。

 

早朝の羽田空港だったこともあり、2時間少々遅れて、代わりのA320型機が用意され、目的地に飛び立つことができました。離陸を中止して、整備に入りますとの機長のアナウンスでは、浮力に関わるエンジンの不備があるとのことでした。そのまま離陸を強行しなくて良かったです。命あっての物種、私が見回した限りでは、搭乗客誰一人、遅れたことに文句を言うことはありません。まさにプロとはこうあるべきと身をもって経験した三連休初日の出来事でありました。