沖縄県民に対する『土人発言』に関する沖縄担当相の発言について。

2016年11月15日
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アメリカ合衆国次期大統領に、ドナルドトランプ氏が就任します。

トランプ氏の当選は、大方の予想を覆すものでした。なぜなら、民主主義の先進国と言われるアメリカで、レイシズムや排外主義を隠そうとせず、選挙期間中も、移民や女性に対して激しい差別的発言をしていたトランプ氏、『まさか』の思いが識者と言われる方々にはありました。

 

でも私は、トランプ氏の極端な孤立排外思想が、国民に受け入れられたとは思いません。

 

新自由主義が、強欲資本主義と言っても過言ではないくらいの経済格差が生まれ、ヒラリークリントン氏は、エスタブリシュメントのシンボルのように『捨てられた市民』には、思えたのでしょう。さて今日は、トランプ現象や格差について、お話するのではありません。差別はアメリカではなく、日本社会に起きているのではないかの観点からの『ひとりごと』です。

 

沖縄県国頭郡東村の高江地区のいわゆる高江ヘリパッド工事現場で、工事に反対する人に対して、動員された大阪府警の警察官が、『ボケ、土人が』と発言しました。後日この発言をした20代の警察官は、土人が差別用語とは知らず、土で顔を塗った人を見たから思わず『土人』と呼んだと述べたとのことです。大阪府警の警察官に採用されるのに、どの程度の能力を要するのか聞いて見たいです。土で顔を塗った人を見たから、咄嗟に『土人』と表現したとは……。相当な理解力想像力です。

 

賢い警察官にしてみれば、全くの偶然となったわけですが、『土人』は、紛れもなく差別用語です。 以前この『ひとりごと』でも、『土人』が差別用語とされた事実、歴史的経緯等を書きましたから、今日は、屋上屋を架すことはいたしません。国会でも、土人論争がありました。アイヌ民族を対象にした北海道旧土人保護法、それはその名称からして差別だと指摘を受け、当時の自民党内閣は、差別的な響きがする、社会通念に照らして適当ではないと答えました。そしてその法律は、1997年に廃止されました。私が子どものころ、チビクロサンボとかホッテントットとか、先の大戦前に大日本帝国が統治していた南の島に住む人々を下げずむように捉えられる用語は、禁句となっていました。

 

『土人』が、この時代の若者から出てくるとは。 この大阪府警の警察官の土人発言が公にされた段階で、安倍内閣のキーマン菅義偉内閣官房長官は、土人発言は。許しまじきことと指摘しましたし、人権擁護を使命とする法務大臣も、不当な差別的言動だと国会で述べました。発言した当人は、素晴らしい感性?が、たまたま差別用語と一致してしまったわけですが、大阪府警は、軽率で不適切な発言で、警察の信用を失墜させたとして、懲戒処分にしていました。

 

この問題、これで終結かと思いきやであります。 安倍内閣の鶴保庸介沖縄北方大臣は、土人発言が、沖縄県民の感情を損ねているかどうかについては、しっかり虚心坦懐に、つぶさに見ていかないといけないと述べたとされます。

 

虚心坦懐とは、随分難しいことを言いますね。土人と言われた当人はもとより、沖縄県の世論は、土人発言に怒り溢れていることは、担当大臣なのに知らないのでしょうか。翁長知事も、会見等で強く非難していますし、沖縄県議会でも、抗議声明が決議されました。こんなこと!虚心坦懐に見る必要もないでしょ。 この鶴保大臣、先週出席を求められた参議院の内閣委員会で、土人であると言うことが、差別であるとは断じることは到底できないと答弁しました。

これはおかしい!閣内不統一ですね。先に指摘したとおり、かつて国会でも、『土人』は差別用語だと明確にされているのです。差別用語とは知らなかったと述べた警察官が、結果的に?差別用語を発した故に処分されています。

 

断じることは到底できないなんて、誰かに、何か阿ているか、別の意図を持っているとしか思えません。 さらに鶴保大臣、現在差別用語とされるものであっても、過去には流布していたものも歴史的にはたくさんあるとも言いました。これは全く意味不明です。これら差別用語と言われるものは、まさに昔多くの人が口にしていました。それが言われた相手を侮辱する意味あいが含まれていたから、言われた側は傷つき、屈辱感不快感を味わったのです。その積み重ねにより、差別用語だとして使用されなくなりました。『昔たくさんあった』だから何だって言うんでしょう。

ひとり差別用語ではないとか、これから虚心坦懐考えてみるとか、一体何のため? 大臣就任後、辺野古沖移転問題で、沖縄県と国との間に訴訟が係属しています。この大臣、『早く片付けて欲しい』ですって。誰のために?沖縄のことを理解し、沖縄のために仕事ふるのではないのですか?沖縄県選出の前沖縄北方大臣が、『歯舞』を読めなかったのは、単に勉強不足と言えましょう。

 

しかし、早く片付けてとは、ハナから虚心坦懐に沖縄県民の声を聞く意思はないですね。沖縄県選挙区からは、自民党議員は、小選挙区では議席を得られず、この夏の参議院議員選挙も、厳しい結果が出ました。すると沖縄県選出の議員のパーティで、『選挙結果と政府の沖縄振興策はリンクしています』なんて述べています。ここに見えるのは、政府与党に楯突く者は!の姿勢です。

 

そんな相手に土人と言おうが、振興なんてドーデも良いと言うことなのでしょう。 トランプ氏、あのレイシズム、排外主義は、グローバル化の行き過ぎで取り残された『普通の人』に向けられたものではありません。

 

彼を支持した人は、彼の差別的思想に共感したのでしょうか。アメリカを牛耳る1%の富裕層、それは新自由主義で儲けた多国籍企業や既得権層だとされますが、その格差に怒った人々が、トランプ現象を起こしたのだと思います。もちろんトランプ氏は、格差に苦しむ人を、差別しているのではありません。

ところが日本はどうでしょう。

 

沖縄県で差別されたのは、政権与党に反対する人たちです。つまりかたやアメリカ合衆国、既得権層の支持を受ける歴代のワシントン、そのシンボルであるヒラリークリントン氏に期待しない人々が、トランプ氏を支持したのです。トランプ氏は、決して弱い者、政府に反対する人を足蹴にしたのではありません。私は、トランプ氏の主義主張を支持するものではありません。ただ、史上最強の与党が君臨し、その総裁のもと『一強』が続く日本では。

 

何としても与党総裁のご意向にそうよう、そのおほえめでたきを得たいがらために、物事を真摯に考えるのではなく、どーすれば気に入られるか、その立ち振る舞いのみに執心しているヒラメ議員が多いことを嘆きます。トランプ氏が支持を受けたことは、日本の民主主義にはあまり影響ないようです。