昨年のクリスマスの夜、24歳の若い命を絶った女性の過労自殺。1年経った日、女性の母親が手記を発表しました。『人は自分や家族の幸せのために働いているのだと思います。仕事のために命を落としたり、不幸になってはならないと思います。』
この企業、今年のブラック大賞を受賞しました。報道各社も、女性の母親の言葉を一面に掲載するなど、過労死・過労自殺の問題を大きく取り上げました。
この社会問題化した違法残業、厚生労働省は、違法な長期間残業があった企業に対し、行政指導の段階での企業名の公表の基準を引き下げることなどを盛り込んだ緊急対策を公表しました。具体的には、月100時間超の違法な長期間労働を月80時間超に見直し、また、複数の事業所で、過労が原因で労災が認定された企業も、新たに公表の対象とすることであります。従前の基準のもとで公表されたのは1社と言う実態がありました。
私は、これを歓迎します。もちろんこの基準に引っかかるような企業が出ないことを望みますし、もし、違法残業を発見したら、果敢に、躊躇なく企業名を公表して欲しいです。見て見ぬ振りは厳禁、また、企業内部での告発もしやすくすべきです。公表を進めるべきなのは、この過労自殺に追い込まれた女性の悲劇、一部の経済人の間では、主としてネット上で、歪んだ見方が発信されているからです。
その最たるものは、普通に考えて、他に自殺する原因があったのではないか、また、困難に直面してどうするかは自己責任、嫌なら辞めりゃ良い等等。こう言うことを言う人たちこそ表に出て、ご遺族や厚生労働省の前で、自論を展開されるとよろしい。だから違法残業、過労による労災はなくならないのです。自己責任とは、みんな同じ立場スタートラインにいるとき、何にも影響されず、どこにも阿ることなく、自由に意思決定できる状況において言えることです。力関係やその時の環境で、『公平』を欠くときには、そんな原理は働きません。
よく言われるのは、今回ブラック企業大賞を受けた件の企業、この会社が残業漬けであることは、世間は皆知っている、だから分かって入社したのだから…と言う見解です。コレ、どうかしていますね。この会社、これまで行政からも司法からも断罪されていなかったと思います。また、新入社員相手にリクルートするときに、『ウチは違法残業させます』って公にしたのですかね。この大企業を知っている、それはその名に憧れたのかもしれない、取引したかったのかもしれない、その会社と付き合いがあると言いたいのかもしれない、そんな人たちのひとりごとでしょう。
そもそも違法残業していることを知っているなら、それ自体悪であり、どうして違法なことをしていた側を擁護するんですかね。こんなことしても、トリクルダウンは起きませんよ。
競争社会に犠牲はつきものかもしれません。犠牲となった人、舞台から降りた人に対して、敬意のかけらもありません。昔自分も死ぬほど仕事をさせられたと誇らしく言う人もいます。そのとき理不尽を思ったでしょう。でも、その理不尽を、だから他の人も受けるのは当たり前のような行動をすれば、世の中から理不尽は無くなりません。あの会社は違法残業をするのは当たり前なんてネット上で言っておりながら、自殺の原因は他にあるって、どう言う神経?
今回の厚生労働省の新基準、こんな意見を払拭することを期待したいです。万一にもこの基準に合っているとして、公表も何もされていない企業の社員、不幸にも労災が発生したら、世間は、『知らなかった』知らされていなかったわけですから。
今回発覚した痛ましい出来事に関して、『知っていたはず』だとして、その結果を回避できなかった悲劇を『自己責任』なんて意見した人たち、『自分は知っていた』、それなのに厚生労働省はなんだ!って、政府を非難するんですかね。
本当に日本人、優しさが無くなったと思います。