真珠湾での安倍晋三内閣総理大臣の演説を聞いた福本悟のひとりごとです。

2016年12月28日
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安倍内閣総理大臣は、日本時間の12月28日、ハワイホノルルで、アメリカ合衆国オバマ大統領と会談し、真珠湾にあるアリゾナ記念館を訪問後、アメリカ国民に向けて演説しました。

この模様は同時に日本国内にも発信されています。

日本国内では、安倍氏を支持(師事?)する方々を中心に、詩的で素晴らしい、感動したとの声が聞かれます。全体を通して、私も良いことを言ってるなと思いました。率直に言って、日頃の安倍首相の言動と、そこから推し量る考え方からすると、予想外でした。

前半部分は、静かな入江の波間に戦闘が起きて、この地で落命した御霊への哀悼の意の表明と不戦の誓いでした。この地で戦死した日本軍人の慰霊碑を、アメリカ国民が建立したことから始まり、終戦後見渡す限りの焼け野原で困窮していた日本国に手を差し伸べたのはアメリカ合衆国であり、さらに日本が国際社会へ復帰する道を開いてくれたことの感謝を、『アメリカ国民の寛容な心』として述べています。ここまでは、歴史的事実でもあり、外交儀礼とパブォーマンスが含まれているとしても、頷けるところです。

安倍総理は、なお言いました。戦後不戦の誓いをした日本、自由で民主的な国を作り上げ、法の支配を重んじ、平和国家として静かな誇りを感じながら、この不動の方針を貫いていくと。これは戦中戦後、アメリカ国民の寛容さによりもたらされたのだとするなら、今言っていること、やっていること違うのではないかと思います。

まず日本国憲法、あれは占領下で、アメリカに押し付けられたものだと言う主張。そして、この日の演説の後半にも繋がる『日米同盟』の内容です。戦い合った敵でも敬意を表する、憎しみ合った敵でも理解しようとする。その寛容の心は、どうしたのでしょう。安倍晋三氏は、いっぽうで、憎悪が憎悪を招く連鎖は無くなろうとしないとも言っています。この点アメリカを中心に、破壊的行動をとった敵を『テロ』と呼び、テロに屈しない、テロと戦うなどと言って他国の紛争に介入し、返す刀で『テロ』を引き起こされる、つまり敵を許さない、やられたらさらにやり返す方向性に進んでいることに説明つきますか。

アメリカ合衆国と日本、歴史にまれな、深く強く結び付けられた同盟国と言いました。そうなんでしょう。問題は、なんの同盟なのかです。世界を覆う幾多の困難に共に立ち向かう同盟と言いました。でも、それは誰の目線、誰にとっての『困難』なのでしょうか。かつての日本を別にすれば、アメリカ国土を攻撃してくる国や人はおりません。しかしアメリカは、外に出て行って、戦争をしています。正確に言えば、困難を抱えた国や民族の戦闘行為に、軍隊と武器を送り込んでいます。イラク戦争の後、ISイスラム国は出来ました。その前、アルカイダも石油を巡る利権が絡んだ中東地域での戦闘行為が契機となった面があります。テロの前には、テロに走った民族地域で、アメリカが加わった戦闘行為があったことを忘れてはなりません。

日本には、日本国憲法があります。

朝鮮戦争を契機に、警察予備隊が創られ、これが自衛隊に繋がります。でも、憲法があるから専守防衛であり、武器を携えて他国に出かけることはなかったのです。それが国連のpkoから始まって、今では集団的自衛権の行使ができるとされて、アメリカに対する攻撃が日本への攻撃となるとして、地球の裏側にまで、自衛隊が出動できる安保法制が確立しました。

何のために、誰のために、こんな体制が構築されたのでしょう。安倍氏は、この真珠湾こそ和解の象徴と言いました。なんでアメリカは、日本に対しなしたように、現在軍隊を派遣している国や地域と和解しないんでしょう。また、日本は、類い稀な同盟国に、和解を勧めないのでしょう。反対に自衛隊を派遣するなんて。

この真珠湾訪問に先立ち、日本が、安倍首相が、アメリカに謝罪すべきか、また、謝罪させられるのではないかの議論がありました。これは、先にオバマ大統領が広島を訪問した時にも議論されました。すでに寛容の心を持ち、類い稀な同盟国となったのであれば、そして互いに不戦の誓いをしているなら、互いに謝り合うまでもないでしょう。

真珠湾ではアメリカ人が、ヒロシマナガサキでは日本人が被害者となりました。ここが日本とアジア諸国との関係と違うところです。動機はどうであれ、アジア諸国の人々、特に朝鮮半島や中国大陸の人々に対しては、この理屈は立ちません。広島で、真珠湾で謝らなかったから、アジア諸国にそれでいいとは思えません。安倍晋三氏が内閣総理大臣になる前までは、河野談話や村山談話、そして基本的に歴代首相は、アジア諸国民に対しては、甚大な被害を与えたことに遺憾の意を表明してまいりました。それをあたかも謝罪を撤回するかな態度をとるから、その国々から批判が高まったのです。かつて謝ったのは間違いだったなんて、おかしいです。真珠湾とは違うのです。

それと気になるのは、真珠湾を済ませたから戦後は終わったではないということです。安倍晋三氏は、ポツダム宣言は、アメリカ合衆国が、原子爆弾を日本に2つも落として甚太な被害を与えた後に、これでもかって叩きつけて来たものと理解しています。それなのに、戦後レジームからの脱却を訴えています。言うまでもなく戦後レジームとは、ヤルタポツダム体制の打破です。これで戦後は総括されたから戦前回帰なんて、絶対に認められるものではないのです。


このとおり行うのであれば、法の支配、民主主義、平和主義これらの規範となる日本国憲法を守り抜く先頭にいなければならない。

国民も、詩的だとか言葉に酔ってではなく、安倍晋三氏の行動を、しっかり検証する必要があると改めて自覚した真珠湾でした。