相続・遺産分割に関する問題一覧

相続が発生した場合、誰が相続人なのかがスタートです。

 

民法(887条等)に規定があります。配偶者は常に相続人となり、これに並ぶ相続人には順位があります。子が第1順位で、子がいない場合は親、親がいなければ兄弟姉妹となり、常に相続人となる被相続人の配偶者と相続分が定められています。

 

配偶者と子の場合は、1対1です。相続発生より前に子が死亡していた場合は、その子(被相続人の孫)が子(孫の親)の地位を承継して相続人となります。これを代襲相続と言います。

 

同順位の相続人間では――例えば被相続人の長男・長女・二女等――法定相続分は同じです。つまり、被相続人の配偶者と子3人が相続人の場合、配偶者が2分の1、子はそれぞれ6分の1を法定相続することになるのです。

 

ところで法定相続分に対し、具体的相続分という用語があります。民法903条に規定される特別受益者の相続分の問題です。

被相続人から生前贈与を受けた相続人がいた場合は、相続開始時に存在した相続財産の価額に、その相続人が生前に受けた贈与の価額を加えたものを、相続財産とするということです。そして、その価額の中から、受けた生前贈与の額を控除した残額が、生前贈与を受けていた相続人の相続分となるのです。

 

具体的には、相続人は妻・子A・子B・子Cの4人で、相続時存在したプラスの財産が銀行預金2500万円、マイナスの財産、つまり借金が300万円あり、実は子Aに対し、200万円の生前贈与をしていたとすると、子Aの具体的相続分は200万円となります。

 

{(2500万円-300万円)+200万円}×1/2×1/3-200万円

=200万円

 

妻(Aの母)は1200万円、BとCは各自400万円です。

 

ところで、以前ご説明した平成28年12月に最高裁判所で判例が変更されるまでは、貯金・現金は相続発生と同時に当然各相続人が法定相続分に応じて承継取得し、各自直接金融機関に対して払戻請求ができるとされていました。

この理屈ですと相続発生時には、現金2500万円が存在したのですが、Aが直接銀行に赴いてその6分の1の金額、つまり金416万6666円を引出して取得することができたのです。

 

ここに挙げた数字に留まる限りは、共同相続人間でさほど大きな争いにはならないかもしれません。しかし子A・Bが相続人で、相続発生時預金が2000万円あるが、実はAが3000万円の生前贈与を受けていたという場合、大きな影響があります。

 

 最高裁判例前  A 1000万円  B 1000万円

 最高裁判例後  A   0     B 2000万円

 

実際の私どもが担当する相続遺産分割事件では、この具体的相続分、つまり特別受益の有無に関する争いが多いです。特別受益分を相続財産に持ち戻すかどうかという意味では、相続財産とみるべきか、つまり相続財産の範囲の問題ともいえます。

このあたりが相続問題解決の解決スタートとなるのです。

相続とは、故人となられた被相続人の財産などの諸々の権利義務を包括的に承継することです。法人には相続はありません。民法では、法人以外の権利能力がある者を「自然人」といいます。要するに、人・個人と称されるのがこれです。

 

相続が起きるとまず、「相続人は誰か」を押さえます。民法にも規定があり、順位が定まっています。配偶者は、常に相続人となります。相続人が確定すると、各法定相続分を当てはめます。後に述べますが、私どものところに来られる方の間では、法定相続分で「ドンピシャリ」と決まることは少なく、「具体的相続分」に従って遺産が分割される例です。

 

相続財産は何か、その範囲(通常遺産の範囲といわれます)が最も問題になることが多いです。仏壇・位牌・墳墓等は、相続財産とはなりません。

相続は、プラス・マイナスの全財産を承継します。親の借金も承継するということです。

 

相続をしたくない場合、例えば債務のみ残されて、これは被りたくないような場合は、相続放棄の申述という家庭裁判所に許可申出する手続があります。

 

プラスマイナスが不明な場合、つまり親の財産の範囲で債務は片付けるが、それ以上の対処はしないという場合は、相続人全員で「限定承認」という方法があります。いずれも相続が起きたことを知って、3ヶ月以内に行わなければなりません。

 

相続人になったあなたが、親に借金があるかもしれないとか、他の相続人との間で遺産分けでもめるかもしれないと思えたなら、「相続財産」に手を付ける前に必ず弁護士にご相談ください。手を付けると、後に放棄ができなくなったり、悪意の果実取得者とみなされるようなこともあるからです。

 

 

相続と言うと、財産分けだと受け取られますが、そうだとは限りません。

相続発生、即ちご自身が相続人となるご親族が亡くなったとき、何から始め、どのようにしていけばよいのでしょう。

 

一般的には葬儀をし、並行して各届出をすると思います。最近は、相続発生が確実視された段階から葬儀の仮申し込みを受付け、打ち合わせに応じ費用を試算する葬儀社もあるようです。最初に必要となるのは葬儀費用で、日本の場合火葬しますから、当然費用が0とはならないのです。

 

後に述べる平成28年12月19日に、最高裁判所が重要な判例を出しました。この判例の実質的意義は別のところにあるのですが、以後相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人)の金融機関に対する預金は、引出しできなくなりました(もちろん金融機関が相続の事実を知らなかった場合は、ATM等で下ろすことは可能でしょうが、相続人間で問題となり得るのです。)。

 

この判例が出されるまでは、預金現金は、相続発生という事実により法律上当然に各相続人の法定相続分に応じて、それぞれが金融機関に申し出て、預金の引出しができる(法律上は、金融機関はこれを拒むことができない)実務でした。故に葬儀代も、被相続人の預金から使うことができたのです。

 

しかし、本件判例により預金も「遺産共有」となり、遺産分割の合意が成立するまでは、「そのまま」の状態となることが決まりました。

そこで葬儀費用?等当面のためのお金は、相続発生前には用意しておく必要があります。もし被相続人の預金から下ろすのでしたら、他の――推定――相続人にもその措置がわかるような状態にした上で、キャッシュカードを預かるなどして、1日の引出し限度額に注意して準備する必要があります。

 

この点前記最高裁に判例において、裁判官の中には、立法手当や家裁で行なわれる相続財産中の特定の預貯金債権を、一部相続人に仮に取得させる仮訴分(家事事件手続法200条)の活用に言及する見解はあります。

しかし現実は、前記のとおり相続発生前からの準備が確実です。

 

因みに一部銀行では、葬儀費用等特定された目的・金額の範囲で、全相続人の同意を要件として、被相続人の預金の引き出しを認める運用がなされております。参考になります。

 

自身にゆかりのある大切な方とのお別れは、厳かにしっかり行ないたいものです。

「相続問題」は、まず葬儀やこれに続く初七日、四十九日後に対処するのが、後々を考えるとよろしいかと存じます。

昨年元号が変わりました。三十余年の平成の時代を挟んで、昭和と令和にも弁護士業務を行うことができ、支えてくださった多くの方々に感謝します。

 

 年齢を踏み経験を重ねる過程で、ここ数年の担当業務にも変化・特徴があります。40代のころから男女・親子・家族・家庭に関する案件が増えましたが、ここ数年は相続や遺産に関する事案が相当数を占めるようになりました。

 

 この間私自身も両親の相続を経験しました。これから先は、相続・遺言・遺産分割等について取り扱う機会が増えると予測し、きさらぎ法律事務所のホームページの中にも別稿を設けることといたしました。

 

 相続は、親から子への承継が基本です。少子高齢化社会が進み、介護看護の側面とも絡み、「相続」を予期した親側からの相談のみならず、親をサポートしなければならなくなった子等の側からも、この程相談を受けることがあります。

 

相談とは民法でいえば、「権利能力の喪失」でもあり、有り体に言えば「人の死」です。どのように生き、終焉を迎えるか、人生観・世界観はたまた宗教観からも、様々な希望や意見を賜ることがあります。

楽して自由に生き誰にも迷惑かけず、自分が亡くなった後も残された人に争いが起きないようにと願う方がほとんどです。

しかし、残念ながらそうはいかない現代日本の現実です。

 

どのような立場、どのような状態の方であっても、私はまず、ゆっくりしっかりお話を聞くことから始めます。どうぞきさらぎ法律事務所にお越しください。随時この稿に書いてまいります。