『神奈川を制する者は全国を制する。』これ、なんのことかわかりますか。
決して私が何かのことで、そんなふうに思っていると言うわけではありませんので、誤解なきようお願いします。
これは、全国高校野球甲子園大会を目ざしたある高校球児が言った言葉です。
隣県神奈川県は、甲子園を目指す高等学校の予選参加数が長年全国一で、200校を超える年度もありました。
その神奈川県の予選の対戦相手を決める抽選会が、先日行われました。
この神奈川県の高等野球で、一際名を轟かせたのは『横浜高校』であり、その監督渡辺元智氏であることは、高校野球通の間では常識の域ではないでしょうか?
渡辺監督と言えば、現在ソフトバンクホークスに在籍する松坂大輔投手の恩師しても知られており、最近では、横浜DeNAベイスターズの4番バッター筒香嘉智選手の才能を見出したことでも有名です。
この渡辺監督、70歳となった今年の夏の大会を最後に、勇退すると発表されました。 横浜高校と言えば、春夏通算甲子園で5回の優勝をした強豪校と言われています。ただ、神奈川県の予選は厳しく、トーナメントで最低7試合勝ち続けなければなりません。
しかも、各校とも『打倒横校!』を合言葉に挑んできますから、横校高校と雖も甲子園の切符をいつも手にしているわけではありません。横校高校対東海大相模などは、いつも球場が満員札止めとなるのです。
渡辺監督は、長年身体との闘いを強いられておりました。常にストレスが溜まって十二指腸潰瘍、胃潰瘍は持病となり、不整脈から心房細動を起こし、やがて脳梗塞で倒れて騙し騙しながら監督をやってきたとインタビューに答えておられました。
勝たなければならない、皆に注目されているプレッシャーは、想像を超えるものがあったと思います。
あるとき突然出奔し、北海道のホテルで学校宛辞表を書いて送ったこともあったそうです。
何も知らない人間は、強くていいな、有名選手に囲まれ慕われいいななんて勝手に思うでしょう。そうでなくても、横浜高校に期待し、見たい!と思う人がたくさんいると言うことは、監督にはプレッシャーになるでしょう。
よく、頂点を極めた後が難しいといわれますが、これだけ長くそのようなポジションにいることの苦労は、並大抵なものではないと思います。
渡辺監督さん、お疲れ様でした。そして「ありがとう」を言いたいです。 横浜高校の優勝、また輩出する名選手の情報より、私は、負けたときの渡辺監督の姿が印象に残っています。
特に、愛甲猛投手が2年生の夏、決勝で『まさか』公立の横浜商業高校に負けたときです。
横浜商業は、60何年ぶりかの甲子園の扉が開いたそのとき、渡辺監督は、苦労されたであろう横浜商業高校の監督さんに歩み寄り、おめでとうを言った後、「私も一緒に甲子園に行きますよ!」と握手を求めれれたのでした。
そして、翌年横浜高校は神奈川を制し、そして愛甲猛投手のもと、夏の甲子園、全国を初めて制したのでした。
高校野球で勝ち続ける学校は全国たった一校、渡辺元智監督が、この夏その一校になる確立はどれくらいかわかりません。
でも、『最後の一校』にならなかった場合の渡辺監督の弁を聞きて見たい!と思うのは、神奈川県否全国の高校野球ファンから叱られるでしょうね。どうぞ身体を厭いながら、渡辺元智氏らしい有終を飾ってください。