イギリスのEU離脱が、日本の参議院議員通常選挙に与える影響について。

2016年6月29日
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大英帝国で行われた国民投票の結果が、全世界に驚きを齎しました。

 

イギリスは、EU、欧州連合を離脱することが、国民投票により決まりました。その差わずか2%にも満たない僅差でありました。2つの大戦を経て、現在は、28カ国に拡大したEUから離脱する初めての加盟国です。最近の日本の風潮、アメリカのトランプ現象、さらに移民で溢れる欧州諸国の現実からしても、むしろそれだからこそ、イギリス国民は、『残留』を選択すると思っておりました。

 

安倍内閣総理大臣は、消費増税を延期する理由を、アベノミクスの手詰まりではなく、世界経済の危機なんて先の伊勢志摩サミットで、各国首脳と共通認識を持ったかに言いましたが、本音は、まさか離脱とは……だったと思います。早速消費増税延期が正しかったと、自分がこれを予見したかに、誇らしげに選挙戦で言っておりますが。 欧州連合は、先の大戦後、ヨーロッパ各国が、不戦の誓いをし、欧州は、グローバル化する社会にあって、貿易、経済、民族等等諸問題は、統合してルールを定めて共有するべく作られた連合体です。

 

イギリスは、ヨーロッパ第2と言われる経済力と、かつての大国としての威信があったので、EU離脱は、想像困難な波紋が、あちらこちらに出ることは、避けられないでしょう。かたちとしては、移民や貿易等では、グローバル化に追いつかず、あるいは取り残されたと感じる国民の少なくない意識が齎したものと言えるでしょう。移民排除を極端な政策として掲げる政党は、欧州諸国に増えるようであり、国を閉ざす方向に進むことは、対立と離反を招く危惧があります。

 

おそらくキャメロン首相は、『本気』で、国民投票を行うつもりはなかったのでは?と思います。

 

例のパナマ文書では、自分の祖先までも中傷されたといささかムキになった感があり、ここを乗り切ってしまえば…の政局がなかったでしょうか?残留か離脱か、何か情動的、ナショナリズムを煽るような選挙戦になったように総括されてもいますが、離脱派がそれを意識したかどうか別として、マグナカルタの歴史ある大英帝国をもってしても、理性を働かすことが難しかったのでしょうか。もとより私は、民主的手続により決められた他国の選択の是非、その内容を、云々する立場ではありません。ここで感じたことは、イギリス国民も必死だったのだ、厳しい日常だったのだと言うことです。国民の声、意識と政治との温度差だったのではないでしょうか。

 

 

今回の国民投票、貧困、格差が生んだ結果との見方もあります。東西冷戦が終結し、ヨーロッパ各地から、多国籍他民族が、EU各国に行き来しました。日本企業が、アジア諸国に進出する理由として、現地の人件費を言われます。安く人を使っているのです。他方、ヨーロッパでは、自国では得られない賃金、事業による収入を、EU加盟国にいることで得られ、これを母国に持ち帰る、あるいは残した家族に送ることが常態化しているそうです。これに移民が加わります。

 

サッカーファンなら、ある程度知っていると思われます。移民としてヨーロッパのある国で暮らすことで、その国の代表としてユニフォームを着るのです。デビットベッカム元選手が、残留を支持したことは、よく知られていますね。彼のチームメイトにも、その経歴の選手がいたはずです。 しかし、人が増えても、それに相応する仕事がなければ生活できません。

 

船を増やさず、船に人だけ増やしたら沈没します。これまで生活の糧となっていたパイの争奪戦が、人が増えることにより、他国からどんどん人が流入することにより、起こり得るのです。今、ヨーロッパ各地では、移民問題は深刻であり、その排斥を主張する極右政党が、支持を受ける傾向があります。仕事がなくなり、活躍の場が奪われたと感じた人は、そのポジションに収まった人を羨み、それを齎したシステムを批判します、貧国格差問題も、これと同列に主張されます。 これが国を閉ざす方向に進みました。

 

また、イギリスは、ヨーロッパ大陸と離れています。かつての大国の誇り、自分の国は自分で決める、自分たちのことに、他国他人は口出し無用の観念があったことは否定できないのかもしれません。イギリスを島国と言ったら失礼にあたるでしょうが、鎖国を生みやすい前提があったのだと思います。 新しい国、自分たちの独立国家?構築とでも機運が高まったのかもしれません。 イギリスのEU離脱は、ヨーロッパ諸国に影響を齎すでしょう。各地で発生したテロと、移民問題を結びつける国家主義的な勢力が、徐々に国民の間に浸透してきたのは事実であり、右寄りの政権が、誕生する流れにあります。難民に対して冷たいと言われる私たちが口を挟めるものではないのかもしれませんが、共存共栄ではなく、排斥と閉鎖へ向かうことは悲しいですね。

 

ところでイギリスの国民投票で、意外に思えたことがありました。それは、離脱派は60歳以降の年代が多く、20代は、70%近くが残留に投票したということです。いろいろな理由が重なっているのだと思いますが、EU諸国に属することのメリット、開かれた社会、ヨーロッパを若者は望み、見ていたことを意味すると思います。冷戦終結後に生まれた世代は、各国間の行き来もあり、世代間の交流、『友達意識』が当たり前なのでしょう。

 

教育や雇用で、機会を得られない状況にはない、少なくともそんなふうには思っていないことが見て取れるのではないでしょうか。ひとつの国を愛する、その発展維持も大切だが、各国との協調共存により得られるもの、また、守られるものを感じているように、数字からは思ってしまいます。 さて、日本ではどうでしょう。私は、逆の結果が出るように思えてなりません。貧国格差問題、貧困の連鎖と言っても良い社会構造の中、閉塞感を打破するには、他に敵を作ることがしばしば利用されます。

 

ナチスが、ドイツの優等性を失ったのはユダヤ人のせいだとした例は、つとに引用されます。ネット上では、アジアの近隣諸国への批判的な書き込みが絶えません。どうしてこうなるんでしょう。先にも申しましたが、若い世代が満たされていないからだと思います。この世代にも、格差が起きています。学校に行けに行けない、奨学金の支払いの有無、そして非正規雇用の現実、さらに家庭が持てない、しかし介護に苦しむ、こんな社会に誰がしたかは今は言いません。

 

怖いのは、こんな社会にした勢力が、批判の矛先をかわすために、『日本人の優秀性』『日本の美しさ』をアピールして、他国や他民族を批判し、世界から孤立して行くことです。 今、世界は『トランプ現象』なる言葉が、まことしやかに流行りつつあります。右翼的閉鎖的民族主義的考えを意味するようです。トランプ氏は、日本に在留するアメリカ軍の費用を、日本が負担しないなら軍を引き揚げると言っていました。そうなると、先の安全保障法は、どうなるんてしょうかね。アメリカが孤立するのではなく、アメリカと一体だった日本が孤立するのではないでしょうか。本気で中国がアメリカを、アメリカが中国を敵視して冷戦となるなんて思っている政治家いるんですか。

 

両国は、バカではありません。日本の独立国家を言うだけ、国際社会から孤立する危惧を覚えます。 日本の富のほとんどは、70歳以上の人が保持し、若い世代には、消費は期待できません。お金もちほど税金が優遇され、しかも、お金持ちにとっては、ガリガリ君程度かもしれませんが、年金生活の方等資産に関係なく非課税の高齢者には、今回30,000円が支払われるそうですよ。お年寄りは、この国が大好きで、変わらないことを望むでしょう。

 

これは、いっぽうでは、戦後日本人が守り抜いた憲法のおかげでもあります。諸国民との協和による成果と、我が国全土にわたって自由のもたらさ恵沢を確保してきたからです。問題は、若い世代、これからの人たちに、憲法に根ざした政治が行われるかです。参議院議員通常選挙の前に、とても気になるイギリスの国民投票でありました。