曲げないこと、歩み寄ること

2015年4月2日
テーマ 
きさらぎ法律事務所を訪れ、弁護士福本悟の依頼者となった方には、よく申し上げる言葉があります。

「あなたが抱えた問題の解決には、法律も判例もありません。この『生の事実』は変えられない。あなただけに存在する事実。この事実を前提に解決できるのは、依頼者と弁護士との信頼関係、ただそれだけです。」

これは、誤解を招く言い方かもしれません。

法律専門家が、法律も判例ないなんて!これは、心構えと言うか戒めです。よく、これこれの裁判があった、私の場合、当てはまりますか?などとご質問を受けることがあります。
皆さん、ご自分の有利な例を探し、また、期待する答えが欲しくて弁護士のところにいらっしゃいます。しかし、それに留まっていたら、解決にはならないことがほとんどです。
人それぞれ、人生いろいろ、全く同じ人生の軌跡はありません。あなたの人生だからです。

そんな話を時間をかけてしながら、心の機微に触れて、互いに信頼関係が持てるか?に進みます。あなたにとっての到達点、私は、よく隠れた幸せと表現することがありますが、そこに向かってブレることなく、プロセスを踏んで一緒にやって行けるか、ここまで話し合って信頼関係が構築できたならば、あとはひとつの流れに乗って、行き着くところに辿り着く、要は、『成るように成る』のです。

それが過去の類似した、何処かで見たことのある判例に似た結論だったかもしれません。また、ある法律の何条に当てはまっていたと気づくかもしれません。

これまでNHK朝ドラ『マッサン』をしつこく話してまいりました。

マッサンの信念、『男は曲げたら終わりじゃ!』は俊兄の言葉でしたが、人に合わせる、その人にとって最高のものが最高なのだとも、説かれておりました。
鴨居の大将ことサントリー創業者の鳥居信次郎氏は、客にこちらから歩み寄ると言いました。
戦争に駆り出され、シベリアで過酷な日々を強いられた甥の悟からは、本物も偽物もない、ウイスキーは、飲む人その人に美味しければ良いのだと指摘されました。

そうです。

その人それぞれの人生、その人ただひとりの人生、その人だけの、その人の独りよがりの幸せのため、自分はどうすべきかを考えるべきなのです。

そんな観点から、私は、依頼者となった方には、あなたひとりの、あなただけの事実、これは誰も変えられない。これを踏まえてどうすべきか一緒に考えていきましょうとお話しいたします。

少しでも信じていただけたならば、信頼関係が構築できたならば、解決出来ない問題はないと言い切っています。

マッサンから学んだこの数ヶ月、無駄にしないと戒める次第です。