春となると、スポーツのリーグ戦が始まります。
野球、サッカー等見る者を楽しませます。フェアプレーとは、もともとスポーツ競技から生まれたとされるように、互いを讃えながら勝負することの大切さを言うものです。
開幕して間も無いサッカーJリーグ第1ディビジョンで、自らの反則行為によって倒した相手選手の顔面を踏みつけるプレーをした選手が、その行為が極めて悪質だとされ、リーグから4試合出場停止処分を受けたそうです。
必死のプレーですから、ときに反則となる行為がなされることは仕方ないとしても、倒れてプレーを続行出来ない相手選手を踏みつける行為は、到底許されるものではありません。
プロサッカーでは、しばしば報復行為は一発レッドとされますが、本件は、自らの反則によって倒れた相手選手の顔面を、スパイクで踏みつけたのであり、その危険性はもとより、品格人間性を疑われる行為だと思います。
私は、かつてサッカー4級審判員の資格を持っておりました。何か一つでも履歴書に書ける資格が欲しいと思って取得したのですが、結局ピッチに立つことなく資格は失われました。
フェアプレー真剣勝負の世界に、不純な動機は怪しからないですね。ただ、資格取得の際に学んだことがあります。リスペクトの精神です。
リスペクト、感謝と言う意味ですが、サッカー競技が成り立ち、自己の技能を高められるのは、チームメイト、相手チームがあり、試合は審判なくして始まりません。
ボール、ユニホーム、ペットボトルその他諸々がなければ、サッカーはできません。これら全てに対して感謝の気持ちを持ち続けようと言う教えです。
ですから、例え明らかな誤審だと思えても、審判に抗議し、まして侮辱的言辞を取ることは許されないのです。
また、ボール等も、どんなにボロボロになっても粗末に扱ってはならないのです。そして、いちばん見苦しいのはプレーそのものと関係ない故意の反則、報復行為だとされます。
リスペクトの精神は、あのあとの私の業務姿勢に大きな影響を与えました。
何かのトラブルに巻き込まれ、辛い思いをしているあなた、苦境を脱し、幸せになりたいあなた、私は、自分が幸せになるためには、相手をリスペクトする、少なくとも踏みつけるがごとき行為をしてはならないと申し上げます。
辛くて藁をもすがる思いで、法律事務所のドアを訪ねられた方には、何を言っているんだ!の感情を持たれて当然です。
でも、気づかないところで、これまでも、誰かに、何かに支えられて、今日はあるのです。
今、紛争の対象となっている相手方に対する怒りは当然でしょう。
ただ、それだけに留まり、先を見ないでは、解決には進みません。おそらく紛争の相手方には、相手方なりの論理感情で、あなたにとっては容認出来ない対応主張をしているのです。そんな相手を徹底的に、これでもか!と追い詰めたら、心を開くことはないのです。
この辺り、いつも申しますとおり、依頼者と弁護士との信頼関係でやり遂げるしかありません。
私が、『競争』を嫌うことはもう、広く知られているでしょう。
それは、そもそも競争が成り立たないところ、競争が馴染まないところで競争原理が導入されるからです。
ですが、それより忌むべきは、スポーツで言えば報復行為、一般社会で例えれば、何かに打ちのめされてリングから降りた者を、「これでもか」とばかりにパンチを見舞う行為です。
ご自分の希望がそれなりに叶ったと言うことは、相手方は、その限度で引いたのです。闘いの場から降りたのです。リスペクトしてあげようではありませんか。
きさらぎ法律事務所弁護士福本悟が担当させていただく案件は、離婚親子親族相続男女の問題等の、深く人間の心に根ざすところが多くございます。
よく、人間性の機微に触れると申しますが、法令判例だけを真似て解決できるものではありません。
「幸せになりましょう。それには相手方を追い詰めないこと、腹八分目がちょうど良いのです」と申し上げます。
歳をとって、このような考えで弁護士業務に携わる方はあまりいらっしゃらないのだなと感じるこのころであります。