先日こんな話題が、ある報道番組で紹介されました。中国のある男性が、とても可愛らしい女の子に一目惚れしたことから、話は始まります。 この男性、魅力的な彼女には、彼のように言い寄って来る男が多いから、彼女を奪われないようにするにはどうでしたら良いか悩みました。 「そうだ!」と思い立った彼は、要は、世の男性に、とてもこんな女の子は相手にされないようにすれば良いのだ!。そうするため、彼は、この彼女を太らせる大作戦を始めたのです。 その結果、作戦は成功し、1年間で50kgも増量でき、可愛らしい彼女は90kgとなり、彼が一目惚れしたときとは全く別人になって、無事2人は結婚できたと言うものであります。 体型にかなり問題がある私からいたしますと、太ったイコールブサイクかの主張には異議がありますが、当人が満足し、ゴールインしたのですから、お目出度いことであります。なぜこんな話題を出したかって?それは、夫婦男女に関する問題に対応する際、しばしば「こんなはずではなかった」「話が違う !」なんて聞くことがあるからです。 結婚、法律上婚姻と言いますが、婚姻の意思、これは離婚の意思でも同じですが、それは、その届け出をするときに存在しなければなりません。よく、予め書いておいた離婚届を、後になってパートナーが提出した場合、「こんなはずではなかった」として、無効が主張されることがあります。結論から言えば、法律的には無効です。婚姻も離婚も、その届け出の際に、その意思があることが要件だからです。 これと似た例?「こんなはずではなかった!」は、弁護士業務の過程でよく遭遇します。例えば、「何処何処に勤務している、どれどれ資産があると信じて結婚したけれど、実際無職無収入で借金だらけだった」「妻とはもう長年他人同然、直ぐに離婚すると言っていたのに、全然奥さんと離婚する気配がない」等等です。 さて、この答えは、先の中国のカップルにあります。この男性、妻となった女性に好意を抱いた動機は、世の男性が虜になるような彼女の可愛らしさでした。しかし、彼は、90kgになった彼女と婚姻したのです。 つまり、この男性、90kgの彼女が好きだったと言うことです。であれば当然、後になって妻が可愛いくない、デブになったから離婚なんて主張は認められません。誠にお目出度いことです。 そこで先ほどの例に戻れば、前者は、『婚姻を継続し難い重大な事由』があると言えそうです。確かに財産の有無等は、婚姻の有無を決する動機に過ぎず、「話が違う!」から婚姻は無効とはなりません。また、そんな?動機で結婚を決めることにも、いろいろな意見はありそうです。しかし、もはや婚姻生活の継続は困難でしょう。 後者はどうでしょう。 このケース、世の男性の常套文句であることは、ここでは議論しません。興味を持っていただけましたならば、きさらぎ法律事務所のホームページ『離婚男女問題』のコーナーに、A.B.C事例として、福本悟の基本的な考えが記されておりますので、ご一読ください。 ここでの問題は、ご不満な彼女、この男性に、何か請求できるのかでしょう。 これはNoですね。だって、現時点で、彼は離婚していないからです。他人の婚姻関係に、他人が、「別れろ」なんて口出しすることは許されません。 こんな事例ばかり………だけではありませんが、………目にしている私からいたしますと、冒頭の中国のカップルの幸せを願わずにはおられません。