理想郷とは?

2015年3月11日
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ニッカウヰスキー余市蒸留所のパンフレットには、『ここが、竹鶴が夢見た理想郷。余市蒸留所へようこそ。』と冒頭案内されています。

本物のウイスキーづくりを夢見たマッサンこと竹鶴政孝氏には、豊かな水、澄んだ空気、冷涼で湿潤な気候がもたらすこの地こそ、約束された場所であり、ここから夢と情熱を後世まで残すことができると感じたとされています。
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正式名『ニッカウヰスキー株式会社北海道工場』となるこの蒸留所では、ウイスキーの製造工程とウイスキーの歴史知るガイド付ツアーがあるのです。

乾燥棟、粉砕糖化棟、発酵棟、蒸留棟、混和棟、そして貯蔵庫まで全製造工程がわかるよう配置されていて、NHK朝ドラ『マッサン』で、しばしば出てくる熟成、すなわち香り高い琥珀色の液体になって行く仕組みがわかるのです。


いっぽうで、ウイスキーの歴史を知るガイドは、世界のウイスキーの歴史と特徴を案内し、ニッカウヰスキーの各年代もの、商品化されたものの説明があります。



こうしてウイスキーの説明に酔いしれた後、メイン?のウイスキーの試飲がなされます。また、有料で、様々なウイスキーを嗜むことができることは言うまでもありません。

敷地内に並ぶ建物は、北海道遺産や文化財に指定される歴史を感じさせる物が多いです。

それだけに倒壊の危険等が認められ、例えば『リタハウス』は館内には入れません。マッサンとリタさん一家が住んでいたとされる横長の建物は、一部だけ入れました。
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余市蒸留所は、マッサンの夢、熟成したウイスキーの息遣いを感じることができる理想郷です。

とても気持ちが良かったです。人間には、各自理想郷とするところがあるはずです。

ただ、マッサンこと竹鶴政孝氏のように、みずから目指し、自覚していたケースばかりではないのだと思います。 
 もともとの理想郷、すなわち『ユートピア』の意味は、トマスモアの著作に出てくるように、現実には存しない社会で、想像の上に描かれた理想の社会だとされます。でも、竹鶴政孝は、この理想の社会を現実のものにしました。今風に言えば、「夢は叶う」と言うことかもしれません。そしてこの夢は、余市蒸留所において、連綿と受け継がれております。 

 理想と現実が一致するとき、人は最大の喜びを得るのだと思います。

そして竹鶴氏のように、理想郷が本物になった後も、今度はそれを残し、承継するための努力を惜しまない姿勢は素晴らしいですし、なかなかできるものではありません。
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私はここで何を学んだだろう、マッサンはどんなメッセージを伝えたかったのかと考えつつ、シングルモルトウヰスキー『余市』をグラスに注いで席に着きました。