房総特急『しおさい号』の車内から、『潮騒』を思い出した福本悟のひとりごとです。

2016年8月22日
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今日は、東京駅から房総特急『しおさい号』に乗車しました。

 

このところ東京駅から乗車する機会があるのですが、新幹線ホームと異なり、地下ホームは、さほど混雑していません。こちらは総武横須賀線ホーム、朝夕の通勤ラッシュが混雑する時間帯だと思います。30分に一本発車する『成田エクスプレス』に乗車する人は、大きな荷物を持っておられます。

 

この時期、海がある房総方面には、家族連れの姿が多く見られます。 特急『しおさい』は、東京駅と総武本線銚子駅を結ぶ特急です。『しおさい』が登場したのは昭和50年3月、総武本線が全線電化されたときです。

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もともと房総方面の観光は、海沿いを結ぶ内房線と外房線に集中しており、総武本線は、県庁所在地の千葉と、佐倉、八街、成東、八日市場や銚子といった都市間を結ぶ役割を果たしていて、東京から直行する機会は、他の路線に比べて少ないと言われました。昔鉄道少年だった私は、蒸気機関車を追いかけ、東京両国駅から『急行犬吠』なる気動車に乗車して、千葉の先佐倉機関区や、成東方面に出向いたことがありました。

 

それが電化とともに特急列車が投入されたのは、総武本線が、房総地区唯一の『本線』を名乗っていることが理由だと聞いたことがあります。東京駅から千葉駅を起点とする優等列車を走らせて、需要の掘り起こしをするには、地区を束ねる『本線』を試すのが相応しいとされたのだそうです。 今日のしおさいは、夏休みでもあり、グリーン車を含めた9両編成で運行されていますが、ガラガラですね。もともとは6両編成で、しばらくはグリーンはなく、この車両を使って、ホームライナーが走っていました。今では佐倉と八日市場の裁判所に行くときには、これを利用します。

 

特に八日市場の行き来は、裁判所に頼み込んで、しおさいの発着時刻に合わせて、時間を指定してもらったことが思い出されます。昨年8月東京駅から外房線の特急『わかしお』に乗車しましたが、明らかにあちらの方が混雑していました。やはり海の魅力が強いのでしょうか。 『しおさい』を漢字にすると『潮騒』ですが、その意味は、海が満ちる時の波の音を言います。昔銚子商業高等学校が、甲子園を沸かしていたころ、その校歌が評判になりました。

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もともとは長い校歌らしいのですが、甲子園では、『幾千年の昔より、海と陸との戦いの激しきさまをつつげつつ、犬吠崎は見よ立てり』でした。 犬吠崎は、初日の出の名所です。この時期台風情報で、犬吠崎の北東何キロメートルなんてよくニュースになります。東京湾に面した内房、砂浜が多い外房、これらの海岸と犬吠崎の勇ましいさまは、なんか違うのでしょうね。地球規模の満ち引き、荒々しい波の音、そこに都心から向かう列車は、『しおさい』が似合うのでしょう。

 

『潮騒』と書くと、古い人間は別のことを思い出すかもしれません。三島由紀夫氏の名作であり、繰り返し映画化された小説潮騒です。昔は吉永小百合さんと浜田光夫さん、私の世代は三浦友和さんと山口百恵さんですね。三重県の鳥羽にある神島をモデルにした古き良き日本の青春、恋愛物語です。日頃、あるジャンルの法的問題ばかりーーだけではありませんが、ーー扱っていると、甘酸っぱい香りとはこんなことかな?と想像したくもなります。

 

今、この『しおさい号』に乗車している人のうちどれくらいの方が、三島由紀夫氏を、潮騒を知っているのかなと考えながら、巨大マンションが並ぶ街々を眺めています。 『さざなみ』『わかしお』は、休日やシーズンには、新宿駅からも出ています。『しおさい』は、平成27年からは、全列車が東京駅発着となりました。

 

それは房総特急の歴史が、東京駅から千葉駅を経て試行された原点に復帰した感がします。特急さざなみとわかしおが、京葉線が開通して千葉駅を通らなくなったこともあり、今ではほぼ2時間間隔で運行されるしおさい号は、東京駅と千葉駅間のビジネスマンに、多く利用されていると聞きます。

 

総武本線を成田エクスプレスの間を抜けるようにして走る特急しおさい号、蒸気機関車を追った鉄道少年のころを思い出しながら、涼しい車内で寛いでおります。もっと利用する人があると良いですね。